週刊 日本の天然記念物(動物編)

012 ヤエヤマセマルハコガメ

セマルハコガメというカメは、たいへん面白い。ハコガメというくらいだから、手足や首を引っ込めるだけでなく、甲羅が完全密閉できる機能付きなのだ。これは生物として画期的。アルマジロやダンゴムシのように、丸まって収納ではなく、パタンと閉じてしまうなんて、なんてすばらしい! 見た目も面白いのだ。ヤエヤマセマルハコガメという種類が、八重山諸島や、石垣島、西表島に分布している。中国と台湾にも同種のセマルハコガメが棲んでいる。彼らは、ほとんど水辺を必要としない陸棲のカメで、一生陸地で暮らす。まぁ、泳ぐことはできるのであるが。我々が持つ『カメ』のイメージからすると、ちょっと変わっている。そのセマルハコガメが昨今、問題となっている。沖縄には、沖縄島、渡嘉敷島、久米島に分布するリュウキュウヤマガメという、同じく陸棲のカメがいるが、この2種の交雑個体(つまりハーフということね)が見つかるようになった。元来この2種は棲息域を完全に分けていたが、ペットで飼われていた中国産のセマルハコガメ(日本では天然記念物のため、売買は禁止されているが、中国産、台湾産のものは規制なく輸入されていた)がリュウキュウヤマガメの棲息域に捨てられるなどして、分布域が混雑してしまった。このままだと、純粋なリュウキュウヤマガメがいなくなってしまうのではないか?という心配さえされている。見た目は似ている(カメとしては)がぜんぜん別の属の生物であり、解りやすくいうと、タヌキとイヌの雑種が生まれたようなものなのである。まさに人の手で行われた、遺伝子汚染の一つと言える。捨てた人はそんなに大事ではないかもしれないが、自然の摂理からすると、とんでもないことなのだ。もっと大げさに言うと、日本人と韓国人のハーフがドンドン増えて、いつしか純粋な日本人がいなくなってしまう、というようなことが、自然界で着々と進行しているということである。引き起こしたのはまぎれもない、私たちだ。