週刊 日本の天然記念物(動物編)

011 ヤマネ

本州・四国・九州の山間部に棲息する体長7〜8cmほどの小さな齧歯目のほ乳類だ。ヤマネはすごい特技を持っている。『冬眠』である。一年の約半分を寝て過ごすヤマネは、木の穴などで体を丸めて熟睡する。多少の刺激を与えても目を覚まさない。それもそのはず、彼らは体温を0℃近くまで下げ、心拍数も1/10に押さえて冬眠している。つまり仮死状態なのだ。SF映画などで宇宙を旅するときに使う、『コールドスリープ』を自分で行っているのである。暖かくなり、目覚めるときには約50分かけて、だんだん体温と心拍数を上げていく。0℃近かった体温は36℃となり、1分間に50〜60回だった心拍数も500〜600回に上昇すると、正常に戻り、今までのぐうたらぶりとは打って変わって、活発に木から木へ飛び回る。造形的には、まさに木に飛び移ろうとしているヤマネが再現されている。森の中を歩いていて、冬眠しているヤマネと遭遇すると、丸い毛玉に出会ったような感覚らしい。そりゃカワイイに違いない。その丸まった姿から、地方によって鞠鼠(まりねずみ)、玉鼠(たまねずみ)、小玉鼠(こだまねずみ)、茸玉(きのこだま)、氷鼠(こおりねずみ)、山凍子(やまとうし)、死寝鼠子(しねねこ←ちょっと物騒)、怠鼠(なまけねずみ←ほっといてくれと言われそうだ)といった呼び名が生まれている。しかし、冬眠という機能は、とっても気になる機能である。先にも書いた宇宙旅行では確実に必要となるだろうし、難病の人を人工的に冬眠させてその間に治癒方法を研究・検討したりもできるかもしれない。とにかく、いろんな活用方法が考えられる。こんな小さな生き物の機能を研究することで明日の人類に大きな進歩をもたらすかもしれないことを考えると、天然記念物に指定され、絶滅危惧種などにしてる場合ではないと思う。とってもありがたい動物なのだから。