週刊 日本の天然記念物(動物編)

009 ヤンバルテナガコガネ

沖縄県本島北部に位置する山原(やんばる)の密林に棲息する、甲虫で、本州のカブトムシよりも大きい。1983年に発見されて2年後にスピーディに天然記念物に指定されている。テナガ。。。というくらいだから、ものすごくアンバランスに手が長い。体調6cmのところ手は8cmある。本物を見たことがないが、フィギュアを見る限り、童心に返ってワクワクする衝動に駆られる。それほどこの昆虫は大きくて迫力がある。造形的には、長い手をいっぱいに広げ、相手を威嚇する姿が再現されている。そう言えば、昔子供の頃、いろんな昆虫を怒らせてみたものだ。チョンチョンとつつくことで、カマキリやカブトムシやクワガタムシ、トンボ、またはカナヘビなどを怒らせた。そのポーズがかっこいいのである。特に甲虫が見せる威嚇のポーズは子どもながらに惚れ惚れした(笑)。彼らにとってはきっと難儀なことであったろう。そんなに怒ってばかりいられねーっつうの、という心境だったに違いない。彼らを取り巻く自然環境で精一杯の威嚇は身を守る最大の武器であるが、そうすることでは解決しない真の恐怖が彼らに迫る。密猟者である。密猟者は、成虫になる前のまだ武器を持たない幼虫時代に襲いかかってくる。木を切り、ほじくり、丸々太った幼虫をさらっては、アンダーグラウンドの市場に流す。買う人も後を絶たないことも問題だ。希少種になればなるほど、高額取引されるので、密漁は増える。需要と供給が完全に一致した世界なのである。それはヤンバルテナガコガネに限った事ではないけれど、物欲キングな人間ほど恐ろしい敵はいないのだ。山原の森では、赤ちゃん誘拐が横行しているのである。山原の密林はまるで宮崎駿のアニメに登場しそうなくらい、神秘的で神がかっている。そんな森の近くにすら米軍の軍事練習所があり、林道は縦横に造られ、密猟者は後をたたない現実がある。それでも、ヤンバルテナガコガネと森の仲間達は今も森の奥深くで静かに暮らしている。いつも思うが、人間が手を出してはならない自然の領域ってのがあるんじゃないだろうか?? この山原の密林もその一つだと思うのだが・・・