週刊 日本の天然記念物(動物編)

005 エゾシマフクロウ

北海道に棲む、翼を広げると2mに達するフクロウの日本最大種である。フクロウというと、ちょっと神秘的で、それでいてかわいいイメージで捉えられることが多いが、(ハリーポッターでシロフクロウが人気者になったし)れっきとした猛禽類。つまり、ワシやタカと同じ肉食の鳥類である。北海道にはけっこう獰猛な動物たちが棲んでいる。エゾシマフクロウをはじめ、オオワシやオジロワシ、ヒグマ、キタキツネなども、獰猛な肉食動物である。だが食物連鎖の頂点にいるはずの彼らが確実に絶滅に瀕しているのが、悲しい現実だ。人の環境破壊の前には、鋭い牙も力強い爪も役に立たないということだ。高度成長期、北海道の開発は自然の奥深くに浸透していき、エゾシマフクロウの住処を侵すことになる。川に作られたダムのおかげで、主食である魚たちが激減し、木材の生産性を上げるため、広葉樹を伐採し、代わりに針葉樹林を人工的に作った。これにより、広葉樹に穴を開け巣としている彼らは、生きるために最も大切な食と住の要素を奪われてしまうのである。このところ、人間の生活圏に近づいているクマやイノシシ、シカなどの弊害が報道されている。はじめに彼らから人に近づいてくることはまず少ない。人間の方が彼らの住処を犯すほど自然の奥深くまで開発の手を伸ばしてしまっているのだ。彼らは仕方なく、人里に下り立ってエサを探す。そして人工的な食物に味を占める。人が捨てたゴミや残飯などである。それらを食べる動物を補食する動物もまた人里に嫌々降りてくる。人は迷惑だといい、彼らを追い払う。捕獲する。迷惑がっているのは、確実に彼ら大自然の住人であることは言うまでもないのだが。。。ともあれ、わずかに生き残ったエゾシマフクロウ達は、今日も自然の森の中で暗闇の番人として静かに、だが獰猛に生きている。造形的には、するどい眼光と、太く力強いかぎ爪がリアルに再現されており、獰猛さがビンビン伝わってくる。