週刊 日本の天然記念物(動物編)

002 トキ

2003年10月10日、絶滅の危機にある国際保護鳥であり、日本産として唯一生存していた雌のトキ「キン」(推定36歳)が、新潟県新穂村の「佐渡トキ保護センター」で死んだ。純日本産の野生のトキはこれで絶滅してしまったことになる。国内飼育下で生存しているトキも96羽(2007.3現在)しかいないのだ。繁殖に関しては同センターで中国産トキとの交配が行われている。中国産と日本産は学術的には区別がなく、同種とされているから、繁殖には問題無いそうだ。が、心情的には中国から連れてきたトキを繁殖させて日本の自然に帰しても、なんだか納得できないのである。大正10年までに一度絶滅したと報告されたトキは、大正15年に佐渡で、昭和4年に能登半島で生存が確認された。この時に自然保護と繁殖のプロジェクトをきっちりやっていれば、自然のトキは絶滅しなかったかもしれないが、日本はそれどころではない時期に突入していた。その後、昭和27年に特別天然記念物に指定されたが時すでに遅く、自然繁殖は無理な状態になっていた。ともかく、純日本産のトキは一度完全に滅びてしまったわけで、中国産のトキを使って繁殖させたトキという鳥がこの世にいればいい。という問題では決して無いと思う。現在トキの人工繁殖に尽力を注いでいる皆さんには敬意を表する。たいへんな気の遠くなるような作業だと想像できる。カラスやテンなどの天敵の増加は、人が招いた自然破壊や環境破壊にも原因がある。そしてトキを絶滅から守れなかった僕ら日本人には確実に責任がある。造形的には、過去の経緯を全く感じさせないほど、トキのフィギュアはどっしりとした存在感を持って立っている。すでに自然界には存在しない生物の大雄々しい姿である。。。泣ける。